先に断っておきますが、私はこのブログでも何度か書いたことがあるかもしれませんが、猛烈な巧舟さんファンですので、主観が入りまくることを、まずはお断りしておきます。
【逆転裁判とは何か】
逆転裁判は、カプコンから発売されている法廷バトルゲームです。まず、現在までに逆転裁判シリーズと類されるものがどれだけあるか、時系列にすべて書き出してみます。
「逆転裁判」GBA 2001年10月
「逆転裁判2」GBA 2002年10月
「逆転裁判3」GBA 2004年1月
「逆転裁判 蘇る逆転」DS 2005年9月
「逆転裁判4」DS 2007年4月
「逆転検事」DS 2009年5月
「逆転検事2」DS 2011年2月
「レイトン教授VS逆転裁判」3DS 2012年11月(※発売元はレベルファイブ)
「逆転裁判5」3DS 2013年7月
スピンオフ的なゲームも作られていますが、通してもう干支一周の人気長寿シリーズです。
私はたぶん、2002年か3年あたりでやりはじめたと思います。
このゲームは誰が作ったものなのか。筆頭としてあげられるのは、カプコン所属のゲームクリエイターである巧舟さんです。2000年にカプコンが若手育成の目的で、1年間で好きなものを作っていいよと立ち上げたプロジェクトで、逆転裁判の原型の企画を考えたそうです。(※1)
巧さんは、これによってその後4までの、企画・シナリオと、ディレクションをされています。(レイトンVSにおいては後述します。)
このゲームの新しかった点は「法廷」という形式で、自分は弁護士、悪徳検事から無実の依頼人を救い出す!探偵パートでは捜査をし、そこで集めた証拠を基に、ロジックを組み立て、一見スキがないように見えていた事件を裁判でひっくりがえす!というのが、今までのファミコン、スーファミ時代にあったようなアドベンチャーゲーム(きく、みる、ばしょいどう、みたいなもの)から見ると実に斬新でした。
巧さんが担当されたのは4まで。それ以降は基本、シナリオは同じくカプコンの山崎剛さんという方に引き継がれることになります。
4以前、4以降。これが逆転裁判シリーズにとって、大きな分かれ目だったと私は思っています。そこに、ナルホドくんや御剣検事がいる、いないに関わらず。
【創造主が消えたあと】
逆転裁判4というゲームは、「黒歴史」と言われています。黒歴史というのは、「消したい過去」と同義です。
1~3までに生まれた、作り手とプレイヤーたちの間のぼんやりとした信頼関係を、4では作り手がバッサリと断ち切ったように当時の私は感じました。なんでこうなっちゃうのー!と叫んだものです。不動の主人公ナルホドくん、御剣検事など人気キャラクターたちが、それまでとは全く違う意味で存在したり、登場すらしなかったからです。
1~3で存在したものは消滅し、新しく登場したのは、あまりかっこいいとは言い難い主人公の新人弁護士おどろきくんや、突然現れたみぬきちゃん、ガリュウ検事などです。みんなが言うほど面白くなかったわけではないのですが(私は「みぬく」はそんなに嫌いじゃなかったです)、やはり主役の不在感は否めず、がっかりしました。
同人誌がたくさん作られ、ファンはナルホドくんや御剣検事のその後を知りたいと渇望していたのに、仕切り直されたゲームの世界観は失望の方が大きく、その怒りはおどろきくんやみぬきちゃんという新キャラクターへの嫌悪に向かったのではないかと、私は邪推しています。そして、4は「黒歴史」になりました。
『<逆転裁判>は3部作!全力を尽くすのだ!』として大団円になった、と巧さんが感じていたところ、4を作ることになり、どうしても3までのストーリーにエピソードを付け加えたくなく、会社に新シリーズとして主人公交代を申し出た(※2)と4の公式ブログに書かれていました。ここで、会社から出された条件が2つあり、「全作までのキャラクター、少なくとも成歩堂龍一を登場させる」「作中で◯◯◯を扱う」ということ。たぶん伏せられていますが2つ目の条件は、当時話題にのぼることも多かったであろう、裁判員制度だと思われます。
もしこの2つの条件が無く、おどろきくんが主人公の全く新しいゲームであったとしたら、4は「黒歴史」などと言われることは無かったかもしれません。ただ、魅力的な主人公を欠いて失速していく可能性もあったでしょう。こればかりはわかりませんが、当時かなりゲンナリした気持ちでプレイした4が、今やると純粋に楽しかったのです。
(↑こういう、まんま漫画になるような会話が楽しいです)4に抱いた違和感を私があげるとすれば、なんといっても最終章の「逆転を継ぐ者」のインターフェースのデザインが未来すぎる点です。「メイスンシステム」というコンピューターは、それまでの逆転裁判の世界観とあまりにかけ離れているし、案内係といってナルホドくんが出てきて、プレイヤーに語りかける(ように見える)わけです。映画のマトリックス的な黒いバックに文字が蛍光色で流れるようなビジュアルデザインは、逆転裁判がSFだと理解しつつプレイしていた人もぶっちぎりで置いていくレベルの「違和感」でした。もしこれが、コンピューターでなく帳面的なもので過去や現在の裁判記録を読んでいくようなインターフェースだったとしたら、ゲーム進行上起きる不条理も案外すんなり受け入れられたかもしれません。
否定的に捉えられがちなおどろきくんは、ナルホドくんよりもちょっと口が悪くて生意気で、腹黒いけど暑苦しいほど熱い若者で、そんな彼とは対照的なガリュウ検事は、二枚目で自信家だけど、愚痴っぽくて案外小さい、でも真っすぐな兼業検事で、ナルホドVS御剣のような、ビジュアル的なつりあいは取れないかもしれないけれど、冷静に考えればゲームのライバルとしては悪くない関係だと思います。
もし、過去の主人公の呪縛からもっと綺麗に切り離されていたら、巧さんが描いたであろう、或真敷の血族と「みぬく」物語は、1~3と同様におもしろおかしい、最高の物語になっていたかもしれません。
4のピアノの弾けないピアニストのナルホドくんのキャラクターと役割は、意外性も含めて、冷静になってみると物語的には絶妙でした。
しかし、4を最後に巧さんは、逆転裁判シリーズを手がけることはなくなりました。
巧さんの脚本の特徴は、夫婦漫才のようなやりとりにあると私は思います。ばかばかしいボケとツッコミが、気付くと謎を解く鍵になっていたりするあのスタイルは、たぶん膨大な量のミステリーの知識と、人を驚かせたい、笑わせたいというサービス精神が描かせるものなのではないかと想像します。それと同じくらい巧さんの特徴と言えるのが、常に新しいゲーム機本体に追加された要素を取り入れて、作品に活かそうとするそのアイデアの豊富さです。
そもそもボタン操作だけだったGBAから、DSで直感的なタッチペンでの操作が追加されると、指紋採取、靴型を取る、検査液を吹き付けるなど、科学捜査という要素が取り入れられました。マイク機能には「異議あり!」や粉を吹き飛ばすといった役割も与えられました。その後4では、新要素の「みぬく」もタッチペンが必須、先ほど4の欠点とした最終章のインターフェースも直感的に作業が出来る点でかなりDSを意識した作りになっていました。
逆転裁判の製作を離れた巧さんが、2010年に手がけた「ゴーストトリック」というDSのゲームがあります。
このゲームは、いきなり死んでしまう記憶喪失の主人公が、魂となって「のりうつる」という移動手段を使いタッチペンを活用して、あらゆる場所で霊現象?を起こして情報を収集し、「自分は誰だ?」という謎を解いていくゲームで、ラストがとても感動的です。ミステリーとしても上質、パズルゲームとしても上質、何よりタッチパネルでしか出来ないゲームになっているところが素晴らしいと思います。これをやった時最初に思ったのが、「逆転裁判4で巧さんがやりたかったのはこういうことだったのか」ということでした。
なかなか、面白い文章も書けてゲームの画期的なアイデアも浮かぶという人はそういません。
その後を継ぐというのは、なかなか過酷な道だなと思うのです。
それから、案外重要ではないかと思う巧さんの作品の特徴は、女の子の少しぶっとんだ可愛さです。真宵ちゃん、はみちゃん、狩魔冥、4のみぬきちゃんもかなりかわいいと思います。得手不得手あるかもしれませんが、主人公の相棒たるヒロインはいつも、ちょっと変わっていて主人公に対してナチュラル失礼、基本は元気がよく、しっかり自立して自分のやりたいことを持ってたりする子です。だからあまりベタベタしない夫婦漫才になります。(単なる突拍子もない子だったり、天然すぎないことが重要だと思います!!!)
4の後、逆転検事というゲームが発売されました。主人公は御剣検事です。
逆転検事シリーズは、山崎剛さんという「逆転裁判 蘇る逆転」(GBAの逆転裁判1にエピソードを一つ追加したDS版)で初めて製作に携わったかたがシナリオ、ディレクターで参加されていて、以後、逆裁5も手がけられています。
山崎さんは、逆転裁判のファンでカプコンに入社して逆転裁判チームに入られたそうです。(※3)
そういう方なら、たぶんご自分が一番、巧さんとの脚本の違いを感じておられるかもしれませんが、巧さんの脚本にある、軽妙洒脱で痛快な、畳み掛けるようなコントにも思える会話劇は、山崎さんにはあまりありません。
5で、登場人物の名前がシリーズ伝統の「ダジャレ」になっているものが多いのですが、どうもしっくり来ません。厚井知潮(あついちしお)、一路真二(いちろしんじ)、静矢零(しずやれい)…今までのネーミング手法を踏襲したようでいて、突き抜けられていない感じが私はしました。巧さん脚本の4では、手品師の或真敷バラン(あるまじきばらん)という人が登場して、バランてなんだ?と思っていると、兄弟子が「或真敷ザック」だと分かり、ざっくばらんか!その後、師匠の名前が「或真敷天斎」だとわかる、裁判で詰め寄られると「あるまじかるうううう!」と叫ぶ、その一連の流れ含めて巧さんのネーミングは面白いです。星威岳哀牙(ほしいだけあいが)、諸平野貴雅(もろへいやたかまさ)、大沢木ナツミ(おおさわぎなつみ)など、独特のネーミングセンスはなかなか真似できるものではないと思います。5に登場する、嫉妬心から学園のスキャンダルを書き立てる、箱を被った女の子がいますが、その子のキャラクターはとてもいいのですが(案外途中にあっさり判明する顔に意外性がないのが残念でしたが)その女の子の名前が、宇和佐集芽(うわさあつめ)だった時、なんだか…ガックリ肩が落ちたというか、私自身、ダジャレがとても不得意なので特に気になるのかもしれませんが…こういう所が「センス」なのかな…などと思ってしまいました。
ただ、山崎さんには、巧さんにないウェットな「エモーショナルさ」があります。巧さんはどんなに辛い結末がやってきても、体感としてはカラリとしたエンディングになりがちなのですが、山崎さんの手がけた逆転検事2は、テーマの父と子の物語がすごく良くて、考えてみると逆転裁判にはこの感じって無かったなあと思ったのです。ただ、逆転検事2のその部分は、逆転裁判の1~3でフリまくられた御剣検事の昔の伏線を「使っている」だけとも言えます。でも、初登場キャラクターの父と子の物語も絡んだりしていく流れはとても感動しました。逆転検事のスーファミ感のある調査シーンなど、独自に作り出された部分はすごく楽しいのでぜひ山崎さんが作ったと言える逆転検事シリーズを、大事にしてほしいです。
逆転裁判の逆転裁判たる部分というのはどこなのか。人によって違うと思います。ナルホドくんだと言う人もいるかもしれませんし、裁判システムだと言う人もいるでしょう。
でも、私の中では、逆転裁判の魂は確実に、あの巧さんの「センス」にあると思っています。裁判システムが生きるのも新米弁護士の横にちょっとナマイキな女の子が何故かいるからこそ。検事はイジワルでおそろしく、たまに凄い変な顔をして、証人は嘘をつき、素っ頓狂なことを言いながら嘘を見抜かれる。
それは「言葉」の応酬で、そこが面白くなければ意味がない。絵という要素は目立つし重要だけれど、あの世界の創造主は、独特のセンスを持つ脚本を書いた人で、その人なき後、その世界は世界の形を成していけるのかと、私は心配しています。
ドラゴンクエストは、堀井雄二が描かなくなってもドラゴンクエストでしょうか。鳥山明さえいれば大丈夫なのでしょうか。案外いけるような、結果いけないような…。
【逆転裁判5】
逆転裁判5をプレイして一番感じたのは、事態はかなり深刻な様相を帯びていくのに、プレイヤーである私は、その事件に全く他人事だということです。感情移入ができず、ゲームが作業になっていくので、プレイしているととても眠くなります。
プレイしながらメモしていたことなどを、まとめてみたいと思います。
・登場人物について
新登場するキャラクター、新人弁護士の希月心音ちゃんは、制作者の肝煎りで登場させたのを感じる贔屓のされっぷりです。…言いがかりに近いですが、逆転検事の一条美雲ちゃんといい、ココネちゃんといい、山崎さんの手がける女の子はとんがった変なポニーテールが多いんですけど何かあるんでしょうか。みくもちゃんとココネちゃんは、一緒にいたらすごく疲れそうな女の子で、なんでこんな子の相手してんの御剣検事ほどの方が…と思ってしまいます。男性キャラは素敵(特にルックスは)ですが女性キャラは…。
ココネちゃんとおどろきくんの相性は悪くないと思うのですが、キャラクターがかぶっていて、このままおどろきくんの存在が消されてしまいそうなのが気になります。今回、ココネちゃんの心理分析「ココロスコープ」にお株を奪われた「みぬく」の行く末が心配です。一番酷いのは、みぬきちゃんです。4ではおどろきくんの横で弁護席に立っていたのに、5では主人公たちとはまったく別行動でした。おどろきくんとみぬきちゃんを次回作では排除してココネちゃん一本にしようというフラグに見えますが…。
ココネちゃんの良かったシーンは、成歩堂像の検証を裁判中に何度もミスしても押し通すところで、ああいう猪突猛進キャラゆえに傍若無人さが許せました。おどろきくんではたぶん許されない行動だと思うのですが、みぬきちゃんなら許されると思うと…やはり二人がいなくなりココネちゃんだけが事務所に残るのでしょうか…。
今回のライバル検事役は、夕神迅という、ルックスはブラックジャックとデビルマンを足したようで、べらんめえ口調の、殺人罪で投獄されている死刑囚です。が、現役の検事でもあり、あだ名は法曹界の歪みということで「ユガミ」です。わあ!死刑囚なのに検事!面白くならないわけがない!と思うのに、エグいほど手強い…という感じもなく、酷い手法も使わず、驚かされるのは手錠の鎖を何度も壊すことぐらいで、いまいちピンときません。というのも、彼は最終的に判明する彼の信条のせいで、最終章の前に悪いことができないわけです。あと「主君を守るサムライ」という設定であれば、拙者ほにゃららでござる、のほうが口調は良かったような気がするし、一瞬挟まった歌舞伎っぽい振る舞いも前後と調子が合ってないし、鷹匠のギミックは楽しいのですが、サムライって鷹匠?というところもよくわかりません。あの格好は維新の志士風だったということを公式ブログを見て知りましたが、山崎さんの作るキャラクターの、こういう「要素やギミックを狙いすぎてキャラクターがブレる」感じが、プレイしてるとずっと些細な違和感になって残り、爽快感に欠けるような気がします。
でもテミス学園の一路先生のギミックなんかは、わりと一貫してるし最後とかすごく面白かったです。
それから、私が5をプレイして一番気になった点なのですが、おどろきくんの学生時代の親友で宇宙研究所に勤める葵大地くんが出てきます。おどろきくんにそんな友達がいること自体は問題ないと思うのですが、二人の合い言葉「大丈夫です!」が何度も登場します。大丈夫です、は4の時からおどろきくんの発声練習として登場していましたが、どちらかというと「大丈夫って言うやつはヤバく見えるからやめろ」とか「うるさい」といった、ギャクの方向の使い方でした。が、5になってこの『大丈夫です』は、学生の頃に、母のいないおどろきくんと葵くんが交わした思い出の「合い言葉」だったと明かされます…エモすぎる!!これの罪深さは、暑苦しい男というおどろきくんのギャグを、泣けるいい話で昇華しようとしている点です。例えるなら、M-1グランプリの優勝者の実家が不幸に見舞われてそこから這い上がった感動秘話を後日放送したり、大流行ギャグの創作秘話にはシングルマザーのお母さんのあの言葉が…みたいなことを後出しされる感じです。それがいいという人もいるでしょうが、一方で蛇足感やうっとおしさを感じて、台無しにされたと感じる人間もいるのです。そもそも「大丈夫」という言葉って、頑張れとかと一緒で、あまりストレートに良しとされる言葉じゃないように思うのですが…?あと、4の感じだとおどろきくんはお母さんどころかお父さんもいないはずですが、そこに二人は違和感は覚えなかったのでしょうか…。
宇宙研究所で、ポンタとポンコというロボットが出てきます。過去作の「タイホくん」のキモかわいさに比べると、ひっかかりのない可愛さだなあという印象ですが、それはさておき、ユガミ検事の実姉で宇宙研究所に勤めているカグヤさんが、このロボットをあまりに殴るので、なんだか会話内容よりそっちが気になってしょうがなかったです。カグヤさんのサド的なキャラクターとしてのギミックなんでしょうが、見ていて辛かったのですが…
ちなみに、「ロボットを証言台に立たせる」というのがいかにも新鮮な要素といった趣があるのですが、何故か実際プレイしてみると何の新鮮さも感じませんでした。もったいないと思います。
そういえば、メガネの御剣検事が出るというのを楽しみにして5を買ったファンもいただろうと思います。私も楽しみにしていましたが、ナルホドVS御剣というファン待望のシーンになったところでアニメーションが挟まり、御剣検事が眼鏡を取ってしまいました。その後の裁判シーンでも眼鏡は外されたまま。大事な仕事で外すメガネはなんのためにかけてるのでしょう?
そういえば5ではアニメが何度か挟まりますが、どのアニメも見たいシーンからちょっとズレていて、ココネちゃんの登場シーンは警察官を投げ飛ばすというシーンなのですが、それ以後特に目立った形ではココネちゃんが強いということは物語に絡んできません。途中何度も入る血みどろの記憶も、決定的な記憶というよりイメージ映像に近く、邪推ですが「時間がなく、物語を詰める前に発注しなければいけなくて焦点のボケたアニメになった」という印象を受けましたが…。一番最後のロケットの件のアニメは、正直直視出来ないレベルの的外れさを感じました。
・難易度
5は、とても難易度が下がったといってもいいと思います。
逆転裁判シリーズはずっと「探偵パートがたるい」という問題を抱えていました。5は、かなり大幅に探偵パートを減らして簡略化しています。探偵パートというのは、殺人が起きた部屋などを細かくカーソルで指して調査するものですが、1~4では無関係そうなところでも指すとわりと細かく主人公たちの夫婦漫才があったりして面白かったのですが、5は、無関係なものを調べることができません。必要なものを調べ終わると調査は切り上げられます。せっかく、3DSの特徴が活かされて立体的に部屋をぐるぐると眺めることが出来るのに、思うさま調べられないなんて!選択肢を減らすという手法で探偵パートを簡易化しているのでしょうか。
そしてなんといっても一番の簡易化ポイントは、「いつでもセーブできる」という点です。いつでも、裁判パートでもセーブできるので、「おかしな質問には重大なペナルティを科しますぞ」と言われても、当てずっぽうにチャレンジして、正解したらリセットすればいいというようなことになってしまいました。
「そうなればいいなあ」と私も過去思っていなかったわけではないのですが、いざ実装されてみると、一体なんのためのペナルティなのか、そんなことならいっそペナルティいらないんじゃないか、と思うわけです。4までは、セーブが決まった所でしかできないため、なんとかゲームオーバーにならないようにと真剣に事件と向き合わざるを得ませんでしたが。
それから、章の最後に決定的な証拠をつきつける裁判所のシーンで、今までならプレイヤーが自分で頭を悩ませて推理するのですが、5では主人公である弁護士の思考の独白に切り替わり、「なぜこうなのか?→こうだったから→それはどういう意味?→こういう意味」などと、特にペナルティもない、何度でもやり直せる思考回路と選択肢の表現が現れるので、最後の推理はプレイヤーは絶対に外さないというシステムになりました。
これは購買層を増やすために、対象年齢を下げたということなのかなあ、と最初思っていたのですが、逆に今までCERO B(12歳以上対象)か全年齢対象のAかのどちらかしかなかったレーティングが、5でCERO C(15歳以上対象)になってしまっています。血の描写がキツすぎるのでしょうか。刺したナイフから流れて来た血の感覚を指が覚えている、と言った証言に、刀には鍔があるから流れてくるはずがない、というムジュンをつきつけるのはさすがにちょっとエグいなと思いました。「精神安定剤」とかも、ちょっと世界観からのズレを感じます。私が逆転裁判で解きたい謎はサスペンスドラマのようなものではなくて、奇想天外な謎なんですが…。
難易度をあの手この手で下げた理由はどこにあるのでしょう?ユーザーの希望を叶えたのでしょうか。テンポを良くするためでしょうか。あまり効果的だったようには個人的には思えません。
これはどうでもいいのですが、英語の件に関して。
私は英語が苦手なので、帰国子女であるココネちゃんの口癖「Let's Do This!」が、意味はわかるんですが例えば「Let's Go!」や「Thank You!」などと違って、語感も良くなく、バッチリくる日本語訳がパッと思い浮かびません。比較するようですが、逆転裁判2の頃の巧さんはこう書かれています(※4)。「…ゲームをまったく知らない人でも気軽に遊べて、ミステリーのおもしろさを満喫できる作品にしたい…そのために、ルールや操作は極力シンプルにして、システムのメッセージも、なるべく日本語を使うようにしたのです。」機械音痴のお母様でも、最後まで行き着けるよう配慮した、とのことでした。巧さんの脚本は、別に漢字でもよさそうなところがあえてカタカナになっていたりする(ムジュン、とか)とは思っていたのですが、英語もそういうこだわりがあったようです。話の本筋ではありませんが、ココネちゃんがドヤ顔で何度も言う「Let's Do This!」が気になってしまいました。15歳以上の人ならわかる英語でしょうから、いいんでしょうけど…。
・世界観
5をやり終えてからすぐに4をやったのですが、すごく違いを感じたのは「スケール感の差」です。
5は、破壊された裁判所や、宇宙研究所など、絵になる舞台から物語が始まります。一方、4までの世界観は事務所からだったり、近所のもめ事だったりします。裁判所もそんなに広くない感じです。
5のスタッフブログで、山崎さんは「とにかく奇想天外でインパクトのある事件を!」と書いてらして(※5)、シナリオを執筆するとき、まず最初に考えるのは事件の概要を聞いただけで興味を抱かせる「事件のシチュエーション」だと書かれています。
まさにその効果のおかげで、私は導入部でこのゲームは面白そうだと思いました。が、プレイしていくほどに、その実態の無さにがっかりしました。妖怪の里でこんなにぱっとしない事件が起こるなんて。学園で事件が起きたのに学園要素が舞台だけだなんて。宇宙研究所で事件が起きた理由がたったアレだけだなんて。面白いシチュエーションならそこでしか起き得ない事件にしてほしいのです。出来事自体が風変わりでも、展開の面白さが薄いのです。
それから、物語の登場人物が、ココネちゃんと知り合い、おどろきくんと知り合い、ナルホドくんと知り合い、と旧知の仲ばかり出てきて、弁護士と依頼人という関係が薄れ、ただでさえスケールが大きく設定されている事件の、超入り口のところでせせこましく事件解決してるみたいになってしまい、舞台のガランとした感じが目立ってしまいます。これが「ここである必要性って…?」という印象を強くしている気がします。
5では冒頭に「崩壊した裁判所」というインパクトのあるイメージを持ってくるために、あえて物語の時系列が前後する構成になっています。が、そのせいで、最初の被告人である森澄しのぶという女の子(ココネちゃんの知人)を、実際にはまったく知らないのに無実にしなければいけなくなります。後の登場シーンを一瞬差し挟むとかあってもいいのに無いので、結局無罪にしても彼女はよく分からない人物のままです。空しいのは、その後彼女との出会いの章をプレイしても、彼女のキャラクターが特に深まって感じられませんでした。彼女はココネちゃんの過去の説明をするためだけに存在し、自然を愛するというのをセリフとギミック?でだけ説明され、どうして自然なのか、編み物なのか、初登場時と二度目の風貌が違うのか、わからないままです。まさか自然を愛する心優しい女の子であるとプレイヤーに示せば、信頼できて弁護すべき可哀想な無実の被告人だと提示できていると思っているわけではないと思いたいのですが。しかも今までの逆転裁判ファンだったら、弱々しいルックスの女の人ほど真犯人だと感じるはずで、善人は誤解されやすく、悪いやつほど善人に見えるというのに慣れてしまっていると思います。こういうところからも、山崎さんはエモくて人の裏側を疑うことをしない、良い人なんだろうなと思うのです。
おどろきくんの友達の葵大地くんや星成太陽さんも、旧知の仲だから、というだけで弁護しろと言われるのですが、星成さんの自暴自棄キャラは、宇宙飛行士として輝いていた時を知らないプレイヤーからすると、ちょっと面倒見きれないほどのうざったさを覚えます。
4の「逆転連鎖の街角」の、おどろきくんと被告人滝太くんとの関係の作り方が秀逸だと思うのですが、まず可憐な婚約者から依頼されて滝太くんの弁護人になります(美人のお願い+割り切った仕事)。話を聞くとヤクザの組長の一人息子でイキがって犯行を自供しているように見え(無罪かも?+生あたたかい目)、その後滝太くんは信頼する人に騙されていたと分かる(無罪を確信+可哀想)という流れなんですが、一足飛びに信じ込むのでなく、じわじわと調査や関係性によって無罪を確信するとプレイヤーが本気で弁護をしてあげたくなる気がします。実は逆転裁判において弁護する相手との関係は、物語の推進力の素になる「ガソリン」に相当して、物語の先を見たい、無罪にしてあげたいという興味が持続します。「ここにガソリンは満タンで入っているものとしますー!さあ進んでください!」と言われても、実際には気持ちは続かないと思います。
・裁判
ココネちゃんの特殊能力である「ココロスコープ」ですが、開発ブログによれば、「今回は証拠品だけでなく”感情”をもとに真相を解き明かす」展開にしたいと山崎さんはおっしゃっていたようです(※6)。エモい。山崎さんはやっぱりエモーショナルです。そこが5の新鮮さなのはわかりますが、逆転裁判といえばやはり、証拠がすべてだったはず…。感情で有罪にも無罪にもなる可能性がある裁判ゲームには公平感が薄く、それでこちらが勝っても楽しくありません。せめて、検事側にも心理分析のキャラクターがいたほうが良かったです。考えてみると、裁判で正当な発言権を持つ弁護士3人対基本ユガミ検事一人の構図はやはりちょっと一方的すぎる気もします…。
5は、過去の超能力アイテムがいくつも出てきますが、そもそもナルホドくんのサイコロックは探偵パートで新しい証拠を得る為に使うもの、おどろきくんの「みぬく」は証言台で動揺を見抜き証拠と併用して証言を崩す時に使う、どちらも従来型の裁判での突破口にすぎません。が、ココロスコープは裁判中におかまいなしに心理分析です。探偵パートで済ませても良かった気がします。裁判中に使えるとしたら本来、ユガミ検事なんかずっと嘘ついてるわけでおどろきくんはもげるかというくらい腕が痛んでもおかしくないはず。どこか、ココネちゃんの見せ場のためにルールをねじ曲げている印象が否めません。
5の裁判では、「法の暗黒時代を終わらせ、正常な法廷を取り戻す」というようなことをしきりに言うのですが、5の裁判こそ正常からほど遠い気がします。『検事は、被告人を徹底的に疑い、追求する。弁護士が、徹底的に被告人を信じて守る。』これが暗黒時代との決別につながるのだ、のようなことを5の最後のあたりで言うのですが、そもそもココネちゃんを特別視しているのはユガミ検事だったり、見知らぬ依頼人をいきなり「徹底的に信じて守」らされたり、探している人物かもしれないと見るや、弁護士と検事と裁判長が結託して「真相究明のために全員で一方向に躍起になる」というのは、さすがにもはや裁判の体を成していません。同じをことをするにしても、「流れで気付いたのでとりあえず証人として呼んでボロを出させよう」「検事という立場は崩せないが、嘘を暴くためのちょっとした手助けはする」「真相究明のため、少し時間を割いてやろう」という形が今までならせいぜいで、5のような不平等感を感じたことはありませんでした。先にも書きましたが、法廷バトルを名乗るなら、敵に不正はされたとしても、プレイヤーが「ズルして勝った」という気持ちを覚えては絶対にいけないと思います。しかも、このゲームは「逆転裁判」なんですから。
【レイトン教授VS逆転裁判というガラパゴス】
逆転裁判5よりも少し前に、「レイトン教授VS逆転裁判」が発売されました。
私は、そもそも世界観が違いすぎるのに趣味が悪い、どうせソフトを売りたいだけの悪い大人が作ったんだろうと思い、全く購入する気が無かったのですが、ある時ふと「巧舟さんが関わっている」と知り、購入を決めました。
周囲の評判もよく、ようやく逆転裁判5をやる前にプレイしましたが、これが完全に巧ワールドで、最高に楽しかったです。もちろん、なんのこっちゃという奇想天外さが無いではないのですが、レイトンとナルホドくんが違和感無く存在できる世界観といい、登場キャラクターも楽しく、完全な番外編であることを作り手が楽しんでいるところが最高でした。
制約がないので逆転裁判1〜3の頃のままのようなナルホドくんと真宵ちゃんの夫婦漫才も楽しいですし、両方の作品のファンなら期待してしまう、逆転組、レイトン組のペアの入れ替えがとても良かったです。個人的にはレイトン教授と真宵ちゃんのペアが最高でした。声優として、レイトン側に合わせる形で逆転裁判の映画のキャストが当てられていました。噂通りの事故っぷりでしたが、私は個人的に桐谷美玲さんは演技はわりとうまいと思っているので、真宵ちゃんは擁護派です。
巧さんの参加度がどれくらいなのか知らないままプレイし始めたのですが、序盤でレイトンがチェルミー警部をからかうような態度をとった時、巧さんの脚本かなと気がつきました。レイトンが天然の毒舌だったり、ルークの口癖の「一番弟子」を面白く扱ったり、レイトンの牧歌的なファンタジー世界にも容赦なく皮肉屋の毒が忍び込んでいました。序盤に事故にあう人の名前が「ジョバンニ・ジコール」だったりとか。
魔女裁判というモチーフが、すごく逆転裁判とレイトンをつなぐ良いキーワードだなと思ったらまさにそこから世界観を作ったようで(※7)この「魔女裁判」が、実にレイトン的な物語(荒唐無稽でギョッとする展開だが血が流れるようなことはほぼ無い)にもなっているし、裁判なので、ナルホドくんがバッチリ弁護します。科学捜査もない、現代の常識も通用しないという世界だからこそひと味違う裁判になります。「群衆尋問」という新しい手法も、タッチパネルを使って面白いです。
堅物で融通は利かないけれど真面目で根はいいやつというバーンロッド卿(検事と同義の検察士)とその愛犬や謎多きネコミミのジョドーラ検察士長、最後まで信用しきっていいのか分からない、大魔女を疑われ続けるマホーネなど、興味深いキャラクターが多く、爽やかな結末の後、その後が気になるほどなのですが、その後を描いたダウンロードコンテンツがあり、これが本編を食うほどの振り切った遊び方をしていて最高です。レイトンVS逆転裁判を買ってDLコンテンツをプレイしていないかたは、半分プレイしていないのと同じなのでやったほうがいいです!!
そういえば、5にもDLコンテンツがありますが、購入する形なのが敷居が高いです。どうやらそこに追加されている章がとても面白いそうです。個人的には、あまり買ってまでするかというとよくわかりません…
この、レイトンVS逆転裁判の一番すごいところは、これが巧さんの所属するカプコンではなく、レベルファイブから発売している点です。というのも、レベルファイブの社長である日野さんが、逆転裁判と、それを作った巧さんの才能を高く評価していて、巧さんに自由に逆転裁判を作ってほしいと心底思っていて、レイトンVSのことを「(レイトンVSは)もう『本物です!』と、言いたいです。カプコンさんには申しわけないですけれど、僕がいちファンとして見ても、『ほかの逆転シリーズよりも逆転らしい、まぎれもないシリーズ最新作』だと思います。」(※8)とまではっきり断言しています。
逆転裁判のファンで、4以降に出来た作品について納得いかなかった人たちのもやもやを、カプコンではなく、外部のゲームメーカーが解消しようとしたというのは、なんとも複雑な気持ちになります。
【逆転裁判のこれから】
5の最後で、過去を振り払って未来へ進む、と明示されていました。それが巧さんとの決別を意味するのだとして、逆転裁判はどうなっていくのでしょうか。
たぶん、ナルホドくんや御剣検事たち人気キャラクターは守られていくはずです。近々戻ってくると宣言されていた真宵ちゃんは、春美ちゃんがちょっと成長していたように、千尋さんに似てちょっとおっぱいが大きくなって戻ってくると思います。しかし、裁判所でナルホドくんの隣に立つのは、ファンサービス的に一度は真宵ちゃんでも、結果的にはココネちゃんになるでしょう。
物語は、見た目は派手でも地味なミステリーに近づき、どんどんエモーショナルになっていくはずです。ブッ飛んだ笑える二面性を持つ犯人よりも、悲しい過去を抱えた犯人が多くなるでしょう。
5にも好きなシーンがあるのですが、番刑事の口癖である「ジャスティス」をココネちゃんも一緒になって応呼するシーンは楽しかったです。が、その後の似たような場面ではココネちゃんが特に「ジャスティス」に反応しない。章仕立てとはいえ、全体で大きな一つの物語なので、前の章で変化したアイテムや関係性があれば、それが後に影響するようにしないと伏線的な楽しみがありません。5は複数人でシナリオを執筆しているといいますが(※9)変化して行く人間関係など、大きな物語の演出という面も気を配ってほしかったです。山崎さんが、演出の方にシナリオのおかしい所を修正されてしまう(※10)という話を現場の切磋琢磨のように書かれていますが、こういう作業によって個性としての『作家性』が減ってゆき『穴の無い無難さ』の強い作品が出来るのだとしたら、そもそも個性のひときわ強かった逆転裁判というゲームは、もはやまったく変質したと言えると思います。
ここで再度、私の考えを述べたいのですが、「逆転裁判」というのは、ナルホドくんや御剣検事という人気キャラクターが登場するゲームという以上に、実は強烈な個性を持つ一人の作家の作家性に支えられて成り立っていたのではないかということです。
その作家性が無くなった以上、同じ世界観でやり続けるのは本来厳しく、個人的には逆転検事シリーズのような、雰囲気の違う新シリーズにした方が良かったのではないかと思うのですが、作家性を欠いてでも守りたかった「枠組み」なのだろうと思うので、今後はシリーズの過去作と見比べない気持ちでいたいと思います。
形はどうあれナルホドくんと御剣検事が見れるのなら問題ない、ということなら、そこに意義はあるような気がします。
「あまちゃん」で大人気の、宮藤官九郎さんの描く物語が好きで、池袋ウエストゲートパークからずっと、脚本作は見ているつもりです。さかのぼれば、「笑う犬の生活」のコントも好きでした。
宮藤さんの凄いところは、よく見ていたのに今あまり見かけないといった、エアポケットに入ってしまったような役者さんや歌手を起用して、それまでその人が守っていたイメージのようなものをぶち壊して新しいキャラクターを世間に気付かせるところです。台詞は、いわゆるドラマ的な言い回しを排除して、自然な言葉で悔しがったり、感嘆したりするのが絶妙です。この2点が特に、宮藤官九郎さんの脚本するドラマの素晴らしいところですが、クドカン人気ドラマが1つ終わると、そのクドカン効果を狙った他のドラマ制作者たち(同じ局もあれば他局もある)が、「自然な台詞の言い回し」の群像劇や、クドカンによって発掘された新しい一面を持つ役者さんを起用したドラマを必ず作ります。すると、だいたい失敗するのです。
簡単に飛びつける要素にだけ飛びついても、「そのもの」にはならない。分かりにくく忍び込ませてあるけれど、細かい知識や記憶や創意工夫がそれを複雑に構成していて、上辺だけ他人が掬っても「それ」にはならない。
ものづくりをする人は、他人のふんどしはあまり気軽に借りてこないほうがいいと思います。
例えば自分の好きなロック歌手のライブに出かけたら、ロックを歌わずにクラッシックで歌い出した。観客は怒ってブーイングをしたら、その歌手は引っ込んだけれど、次に出てきたのはそっくりさんだった。
果たしてどっちがいいのかわかりませんが、私はそっくりさんに対して、大きな失望を隠せないでいます。
私は今、あのクラッシックの歌わりと良い歌だったなぁ、と思っていたりします。
【蛇足:実写映画「逆転裁判」について】
成宮寛貴(成歩堂龍一)、桐谷美玲(綾里真宵)、斉藤工(御剣怜侍)などが演じる逆転裁判の1の実写化。
監督は「十三人の刺客」「藁の楯」などハードな話題作も作りながら、「ヤッターマン」「忍たま乱太郎」などアニメの実写化映画も多く手がける三池崇史。
あまりにも強烈なコスプレ印象のため、そもそもかなり期待度が低すぎたので、アイテムの再現率(トノサマンのバルーンや金属探知器など)に割と感動してしまいました。
私は、三池監督という人がいくら世間から評価されていても飲み込めない「苦手さ」のようなものがあって、実はあまり積極的に三池作品は見ないのですが、実写化する時、原作に対するある程度の「リスペクト」のようなものを感じるので凄いなと思います。アニメをアニメと馬鹿にして、名前だけ借りて原作を尊重しないような制作者が多い中、原作ファンが「わかってらっしゃる!」と思わず膝を打つようなポイントがあるだけ、心があるなと思います。
確かにこの映画はトンチキです。主人公たちのコスプレ感を消すために傍聴席の全員をコスプレイヤーにする、というまさに「発想を逆転させるのよ」といった仕組みも、苦労の跡が見えます。
ただ、綺麗な負け方というか、この失点で済んだのは三池監督のおかげというか、そもそもこんな、証言台にオウムが立つようなゲームを実写化しようという時点で、完全な負け戦です。そこに乗って、ある程度ファンも楽しめて、ナルホドくんたちの小学生時代もちゃんと描くところまで持っていってるのは凄いと思いました。
と、私がここまで擁護する気になったのは、私の愛するタイホくんが、めっちゃくちゃいいところで出てきたからです。特に、サイバンチョが木槌を叩いてしまうのを阻止する中盤のシーンが最高で、しかもちょっとホラーな展開になっていたのが何度見ても笑います。タイホくんが、キモかわいいのだ!ということを分かって作ってくれてることにとにかく感動しました。

ちなみに、御剣が無罪になった時、傍聴席で矢張とキャッキャと喜んでいた巧舟さん…ずいぶん楽しそうでした。思い入れのある1の映画化、感慨深かったでしょうなあ…www
長々書いてまいりましたが、これで終わりです。
やっとゆっくり寝られそうです。
ここまで読んでくださった方がもしいたら!
おつきあいいただき、ありがとうございました!!
<参考資料・引用元>
※1 … 社長が訊く『ニンテンドー3DS』ソフトメーカークリエーター篇 第23回 2
http://www.nintendo.co.jp/3ds/interview/creators/vol23/index2.html※2 … 逆転裁判4公式ブログ 2007.03.30
http://www.capcom-fc.com/saiban4/2007/03/post_3.html※3 … 逆転裁判4公式ブログ 2007.03.27
http://www.capcom-fc.com/saiban4/2007/03/post_2.html※4 … 逆転裁判2開発者コラム 第2回
http://www.capcom.co.jp/saiban2/main/koramu/koramu02.html※5 … 逆転裁判5公式開発ブログ シナリオの<ヨクバリポイント>
http://www.capcom.co.jp/gyakutensaiban/5/blog/20130624.html#more※6 … 逆転裁判5公式開発ブログ あれもこれも!逆転裁判5よもやま話
http://www.capcom.co.jp/gyakutensaiban/5/blog/20130704.html#more※7 … 社長が訊く『ニンテンドー3DS』ソフトメーカークリエーター篇 第23回 1
http://www.nintendo.co.jp/3ds/interview/creators/vol23/index.html※8 … 社長が訊く『ニンテンドー3DS』ソフトメーカークリエーター篇 第23回 5
http://www.nintendo.co.jp/3ds/interview/creators/vol23/index5.html※9 … 逆転裁判5公式開発ブログ シナリオのお仕事
http://www.capcom.co.jp/gyakutensaiban/5/blog/20130812.html#more※10 … 逆転裁判5公式開発ブログ 命を吹き込む
http://www.capcom.co.jp/gyakutensaiban/5/blog/20130819.html#morePR